ウイルス不活性化の種類
ウイルスの感染経路には動物や昆虫を介した人畜共通感染もありますが、主なものはヒトからヒトへの水平感染です。これを予防するためには感染経路を遮断もしくは回避しなければなりません。
新型コロナウイルスに対しては、飛沫を吸い込まないように人との距離を保ち、飛沫を拡散させないためのマスク着用が基本です。しかしこの対応策だけではウイルスは生き残っているままです。
そこで重要になるのがウイルスの「不活性化」。ヒトの細胞に寄生して増殖するウイルスの活動を阻止し、活動できなくなる「不活性」な状態に変化させるのです。ここからはそのためのいくつかの有効な方法を紹介します。

手洗い
手指に付着したウイルスに対しては洗い流すことが最も有効な対処法です。
手洗いを15秒行うだけでウイルスの数は1/100に、さらに石鹸やハンドソープで10秒、それをすすぐのに流水で15秒洗えば1/10000に減らすことができます。ここまでしっかり手洗いができれば、その後に消毒液を使う必要はありません。
2020年はノロウイルスに罹患する子どもが減った、という話を聞きますが、これは新型コロナウイルス対策として手洗いをしっかり実行するようになった結果と考えられています。
熱水
身近にあって手で触れる頻度が高いものには、熱水でウイルスを死滅させることが手軽にできる方法として挙げられます。熱水とは60℃以上100℃未満のもの。
熱水での除菌はアルコールを用いるよりも効果があるとされます。直接手で触れて口に運ぶために使う食器や箸、布製品などは、80℃の熱水に10分間浸すことで十分な消毒効果が得られます。
熱いお湯を用いますので、使用の際は火傷に十分注意してください。
次亜塩素酸水
次亜塩素酸水は次亜塩素酸を主成分とした酸性の溶液です。酸化作用で新型コロナウイルスを破壊、無毒化し、感染力を減弱することが確認されています。
人体以外のテーブルやドアノブなどの消毒に有効です。また、「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」とは呼称は似ていますが異なる物質です。
次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性で、原液の状態で長期保存が可能ですが、次亜塩素酸水は酸性で保存状態によっては効果が急速になくなります。
二酸化塩素
新型コロナウイルスに限らず、インフルエンザウイルスやノロウイルスには手洗いや室内の換気が必要とされています。
しかし窓のないバスルームやトイレ、洗面所など十分な換気がしにくい場所もあります。そういう場所には二酸化塩素を利用しての空気除菌が有効とされています。二酸化塩素には酸化作用があり、ウイルスのたんぱく質を酸化させて不活性化します。
空間除菌やウイルスの不活性化に効果があると、さらなる研究が期待されています。
OHラジカル
O(酸素)とH(水素)がくっついたOHラジカルは、空気清浄機をはじめ様々な家電製品に搭載されています。
OHラジカルは活性酸素と呼ばれるもののなかでは最も反応性が高く酸化力も強い分子です。糖質やたんぱく質などあらゆる物質に反応するので、臭いや菌、ウイルスを酸化させることで減滅できる、というメカニズムを利用して家電に用いられています。
しかしその反応性の高さが原因で非常に短命で、効果が長続きしないことが弱点です。
オゾン
オゾンは大気中に存在し、大気を自浄する働きを持ちます。
塩素の7倍とも言われている強力な酸化力があるので、脱臭や殺菌などにとても有効です。酸素(O2)に放電することで発生するので低ランニングコストであることや、残留毒性がない安全性もオゾンの魅力です。
細菌やカビ、ウイルスなど除菌対象は幅広く、これまでにも感染率の高いウイルスの減滅に高い効果を発揮しており、新型コロナウイルスに対して有効であるとの研究発表がされています。
深紫外線(UV-C)
水道水の安全性が疑わしいときは、水道水を5時間ほど太陽の下に置いておくと良いと言います。この根拠は紫外線に殺菌力があるとされているからです。
なかでも波長260nm付近の深紫外線にその効果が高いのですが、残念なことに深紫外線の多くが地表に到達する前に上空のオゾン層で吸収されてしまいます。
十分な殺菌効果を得るためには太陽光にあたる時間を長くするしかないのですが、皮膚の色素沈着の原因になるデメリットもあります。
光触媒
強い酸化還元作用と超親水作用によって、自浄効果や抗菌・抗ウイルス効果が認められている光触媒。酸化チタンが代表的な材料で、これに多少の不純物を加えて光触媒反応を活性化させたのもが住宅の内装コーティング材料として利用されています。
ヒトにもペットにも無害であり半永久的に効果が得られ、抗ウイルス効果も注目されています。ウイルスの突然変異の影響もほとんど受けないものとされています。
消毒全般
一般に「消毒」は菌やウイルスを無毒化することであり、「除菌」とは菌やウイルスの数を減らすことを指します。
市販されている消毒剤や除菌剤であってもすべての菌やウイルスに対して効果があるわけではなく、とくに新型コロナウイルスではまだウイルスの全貌が解明されていないため、本当に有効な製品であると断言されていないのが現状です。
製品を選ぶ際は慎重に。とくに手指など人体に直接使うものであれば、有効性や安全性が確認されているものを選択しましょう。