「人と環境に優しい」ウイルス対策情報サイト
新型コロナウイルス感染症はまったく新しい感染症なので、これまで「常識」とされた感染症対策だけでは不十分なのが現状です。
そのような状況のなかであっても私たちができることは、自分の生活エリアの除菌やウイルスを不活性化させることです。ここからはそれらに有効な方法の、それぞれの検証結果などを紹介します。
手指に付着したウイルスに対しての手洗いは、簡単で誰でもすぐにできる不活性化の方法として最も進められているものです。
その理由を裏付ける検証結果が、2006年にすでに発表されていました。ほんの数10秒、手洗いにかける時間が違うだけで手指に残るウイルスの数が激減することがわかります。
手洗いの時間・回数による効果
手洗いの方法 | 手洗いなしと比較した場合の残存ウイルス数(残存率) |
---|---|
手洗いなし | 約1,000,000個 |
流水で15秒手洗い | 約10,000個(約1%) |
ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数百個(約0.01%) |
ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数十個(約0.001%) |
ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回 | 約数個(約0.0001%) |
出典:森功次ほか「感染症学雑誌」80、2006年
経済的でありながら有効な消毒方法とされているのが熱水を利用したもの。目安は「80℃・10分」となります。
新型コロナウイルスに対しては、70℃で5分以内にウイルスが検出できなくなったという説もあり、やはり基本目安の「80℃・10分」は信頼性が高いものと言えそうです。
日本における熱水消毒の条件(抜粋)
対象物 | 処理条件 |
---|---|
器具類一般 | 80℃・10分の熱水 |
リネン | 80℃・10分の熱水(熱水洗濯機) |
食器 | 80℃・10秒(食器洗浄機)、場合により10分 |
出典:小林寛伊編集「消毒と滅菌のガイドライン」へるす出版、2015年
2020年6月、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が「新型コロナウイルスを用いた検証で、一定濃度以上の次亜塩素酸水が消毒に有効」という最終結果を発表しました。
ここで次亜塩素酸水の有効濃度は35ppm以上と数値で示されています。
新型コロナウイルスに対して有効と判断された物質のまとめ及び新型コロナウイルス除去の際の注意等(次亜塩素酸水)
(抜粋)
➢検証試験結果から有効と判断されたもの
➢検証対象とした次亜塩素酸水(pH6.5以下)について以下の条件で有効と判断する。
・次亜塩素酸水(電解型/非電解型)は有効塩素濃度35ppm以上
新型コロナウイルス除去の際の注意等(次亜塩素酸水)
有効とされた条件の次亜塩素酸水を適切に使用することで、新型コロナウイルスの除去が期待できる。
次亜塩素酸水の特性や今回の検証試験結果を鑑み、次亜塩素酸のウイルス不活性化に効果的な使用方法を下記に記載する。
1、汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去する。
2、対象物に対して十分な量を使用すること。
出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)」、2020年6月
二酸化塩素にはウイルスの不活性化が期待できますが、日本においては消毒薬としては未認可で、現時点では医薬品として販売はされていません。
しかし高い酸化作用があることは確かで、次の図はそのメカニズムを示したものです。
二酸化塩素の作用メカニズム
出典:社団法人日本二酸化塩素工業会「二酸化塩素除菌の仕組み」
OHラジカルがウイルスの不活性化において最も期待されている理由は、酸化力の強さにあります。
しかし通常の環境においての寿命が短く生成後にすぐ消滅してしまいます。この点をクリアするべく各家電メーカーが技術開発を重ねているところであり、ウイルス除去効果を示す数値の発表が待たれます。
高濃度オゾンガスでのウイルス抑制効果は知られていましたが人体への毒性が問題でした。しかし2020年8月、愛知県の藤田医科大学が人体に無害な濃度調節をした低濃度オゾンガスに新型コロナウイルスの感染力を抑える効果があると発表しました。
最も効果が表れたのは、オゾンガス濃度:0.1ppm、湿度:80%の条件で10時間後には処理しなかった場合の4.6%まで減少したものでした。
さらに低濃度の0.05ppmでも、20時間後には5.7%となりました。この結果から、空間に均一な効果を与えられるオゾン発生器を長時間使用することで、ウイルス感染力を限りなく抑えることができる、とわかり、人と環境に優しく安全に使えるウイルス対策として証明されました。
紫外線はその波長によって3つに分類されます。
紫外線の種類 | 波長 |
---|---|
UV-A | 400-315nm |
UV-B | 315-280nm |
UV-C | 280nm未満 |
紫外線による殺菌効果のピークは260nmとされます。310nm程度になるとほとんど効果はなくなります。
つまり、主に地表に届くUV-AとUV-Bでは殺菌効果は期待できず、ほぼ届かないUV-Cでなければ期待はできない、ということになります。しかしこのUV-Cの殺菌力を人工的に活用しようと技術研究は活発です。深紫外線LEDなど製品化に向けての動きは始まっています。
光触媒は光があたることで活性酸素などのラジカルを発生し、菌やウイルスを殺菌・不活化させます。二酸化チタンベースのものやタングステンベースのものなどがあり、とくにタングステンベースの光はA型インフルエンザウイルスを4時間で1/1000、8時間で1/100万以下に減らすことができます。
様々な菌やウイルスを不活化させることが確認されている光触媒ですが、インフルエンザウイルスへの効果は確認されているものの、新型コロナウイルスに対しては実験が進められている段階です。
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)が行った、一般家庭でも入手可能な消毒効果が期待できるものについての検証結果が、2020年6月発表の「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)」にまとめられています。
代替消毒候補物資の選定(抜粋)
抗ウイルス効果 | 利用対象 | |
---|---|---|
アルコール消毒液(70%以上) | ◎ 有効 | 手指、(食品)、物品 |
界面活性剤(台所用洗剤など) | ○ 有効である可能性 | (食品)、物品 |
第4級アンモニウム塩 | ○ 有効である可能性 | (手指)、物品 |
過炭酸ナトリウム | ○ 有効である可能性 | 物品(医療用) |
出典:独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)「新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(最終報告)」、2020年6月
また、2020年9月に北里研究所および北里大学が、新型コロナウイルスに対する消毒薬の効果を検証した結果を発表。検証結果を次のようにまとめています。
出典:北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学Ⅰ・感染制御科学府ワクチン研究室 戸高玲子ほか「新型コロナウイルスに対する消毒薬の効果」、2020年9月
新型コロナウイルスに関してはいまだ不明な点が多く、これから徐々に解明されていくものであるため「これがいちばん効く」と断言できるものはありません。
しかしこれまでに様々なウイルスに対しての検証がなされているものに関しては、不活化のための参考にして良いと考えられます。